先日、統計検定準1級に合格しました。本記事では、学習方法や試験の感想を共有します。準1級は2級に比べ情報が少なく、対策に苦労しました。同じ悩みを持つ方の参考になれば幸いです。
前回の2級の合格体験記はこちら。
受験前のバックグラウンド
- 大学時代は経済学部に所属していたため、必修科目として統計学を履修しました。当時は単位を取ることのみに注力していたため、学習した内容は全く覚えていませんでした
- 高校時代は数学IAⅡBを一通り学習し、少なくとも苦手意識はありませんでした
- 数ⅢCは未履修だったため、この範囲の微積分や行列については学習経験がありませんでした
- 本業ではソフトウェアエンジニアをしており、統計や機械学習を用いた業務の経験はありません
- 2025年3月に統計検定2級に合格しました
統計検定準1級を受験した理由
統計や数学の知識を深め、AI領域への理解を高めたいと考えたためです。準1級では多変量解析など2級にはない手法が扱われる点にも魅力を感じました。また、試験範囲に微分積分と線形代数が含まれており、以前から強化したかったこれらの分野に取り組む良い機会になると考えました。
学習時間
2級合格(2025/03/23)後の4〜6月に毎日3時間程度学習し、計300時間ほどを費やし、初回受験で75点を取得し合格しました。
準1級のために学習したこと
学習内容は大きく次の3つに分類できます。
- ワークブックの理解・暗記
- 問題演習
- トピック別の補強学習
1. ワークブックの理解・暗記
【書籍】統計学実践ワークブック
ワークブックの例と例題を中心に3回解きました。本文中の抽象的な説明や記号が多い箇所は理解が難しかったため、後述のチートシートで要点を暗記する方針を取りました。特に難しかった章は以下のとおりです。
- 7章 極限定理,漸近理論
- 8章 統計的推定の基礎
- 19章 回帰分析その他
- 23章 判別分析
- 26章 その他の多変量解析手法
- 32章 シミュレーション
【note】統計検定準1級講座
とけたろうさんという方が作成されている、統計検定準1級用のnoteの有料講座を購入しました。ワークブックの不足箇所を丁寧に補完しており、理解の底上げに大きく貢献しました。記事執筆時点(2025/07)で23本の講座があり、各章が解説+演習問題の構成です。
私は記事をすべて印刷し、1行ずつ精読しながら不明点をメモして活用しました。準1級に向けた学習方法としては、専門書を多読する方法もありますが、ワークブックと記号体系が異なる場合が多く必ずしも効率的とは言えません。この講座はワークブックとの乖離がなく、必要な知識を集中的に吸収できました。
【ブログ】統計検定準1級チートシート
ワークブックの章ごとに要点が整理されたチートシートを使い倒しました。こちらも、とけたろうさん作です。ワークブックや過去問で得た気づきを書き込み、試験に必要な知識を一元化しました。試験直前はこのシートを繰り返し読み込み、短期間で総復習できました。
準1級では2級範囲も出題されるため、2級用チートシートも同様に活用しました。
【Udemy】独学者のための統計学応用講座
統計検定準1級の重要トピックについて、非常に平易にわかりやすく説明されているKawaguchiさん作の動画教材です。2級合格後、準1級受験を迷っていた時期に受講し、多変量解析へ興味を持つきっかけになりました。「これなら自分にもできそう」と感じられたことが受験決定の後押しとなりました。
【YouTube / Udemy】 「統計学実践ワークブック」解説講座
ワークブックの例題について解説されている動画教材です。こちらもKawaguchiさん作です。大半がYouTubeの無料動画として公開され、一部が有料教材としてUdemyで販売されています。ワークブックの例題の解説は計算過程に飛躍があるため、そうした行間を補ってくれる本教材は有益でした。
さらに、計算プロセスを詳細に示した以下のZennの記事も参考にしました。
2. 問題演習
【書籍】統計検定 準1級 公式問題集
ワークブックを 2 周した後に取り組み、選択問題と部分記述問題を3周しました。体感としてはワークブック例題より解きやすい問題が多かった印象です。初見で正答率 6〜7割だったため、準1級合格への自信につながりました。論述問題は難易度が高く、時間の都合で未着手ですが、不合格だった場合は全問取り組む計画でした。CBT の形式に近く実戦的なため、ワークブック1周後から並行して解くのも有効だと思います。
【書籍】統計検定 2級 公式問題集
2級範囲を確実に得点源にするため、問題集を解き直しました。
3. トピック別の補強学習
苦手分野は別途書籍で補強し、興味に応じて専門書も読破しました。
【書籍】ゼロから学ぶ微分積分、ゼロから学ぶ線形代数
準1級に必要な数学を補うため、以下の内容を重点的に学習。
- 微分積分: 積の微分公式、商の微分公式、合成関数の微分、置換積分、部分積分、重積分、畳み込み積分、ラグランジュの未定乗数法、テーラー展開、ネイピア数の微分積分
- 行列: 四則演算、行列式、逆行列、固有値、固有ベクトル
これらの数学知識がないままワークブックに取り掛かったところ序盤でつまづくことが非常に多かったです。ワークブック着手前に学んでおけば、序盤のつまずきを減らせたと痛感しています。
【書籍】確率・統計キャンパスゼミ
ワークブックの以下のトピックに苦手意識があったので、別途書籍を使って学習しました。
- 確率分布
- 変数変換
- 積率母関数
理論面を微積分を交えて丁寧に解説しており、苦手意識を払拭できました。ただ残念だったのは、演習書として『演習 確率統計キャンパス・ゼミ』も追加で購入したのですが、『確率統計キャンパス・ゼミ』に収録されている問題の数値改変問題がメインであり、ほぼ使わずに終わってしまったことです。
【書籍】数学大百科辞典
準1級に必要な数学の知識のメインは微分積分や線形代数なのですが、他にも数列の知識(等比数列の和...確率母関数の導出の際に使う)なども必要になるため、全体的な数学の知識の補強のために購入しました。全て読み通すことはなく、周辺知識を調べる際の辞書的ツールとして利用しました。
その他使用した教材
以下の 2 冊は合格必須ではありませんが、試験範囲を網羅しつつ読み物としても面白かったです。
- 『道具としてのベイズ統計』
- 『多変量解析がわかる』
有用だったツール
ChatGPT
ChatGPT Plusに課金して、わからない内容を質問しまくりました。数理系に強いと言われている「o3」のモデルを使用し、以下のようなリクエストをたくさんしました。
- 問題解説: ワークブックや問題集の該当ページをスマホで撮影してアップロードし、詳細に解説を依頼
- 計算支援: 例) 指数分布のモーメント母関数を導出して
- 用語比較: 例) 無向独立グラフとモラルグラフの違いを教えて
- グラフ作成: 例) AR過程とMA過程のスペクトル密度関数を可視化して
ググるよりもピンポイントに知りたい情報を得られるので、ChatGPTは資格試験の良きお供だと感じました。
電卓のメモリー機能
私は経理職員だった時に電卓を多用しており、メモリー機能についてもある程度習熟していました。メモリー機能は素早く正確に計算するためには必須の機能であるため、これらの機能への習熟は統計検定受験時に大いに役立ちました。
試験の感想
- 問題数: 大問21問(各1〜2小問)で実質30問前後
- 難易度: 『公式問題集』(論述除く)と同程
- 時間配分: 1〜2 分考えて不明なら解答を仮決定して次へ。見直しを含め20分余りました
- 手応え: 6割は自信を持って解ける、2割は2択まで絞れる、残りの2割の問題はほぼ勘。合否は5分5分くらいで、結果は75点のため上振れ
最後に
2月から統計の学習を開始し早5ヶ月が経ちました。学習自体は非常に楽しいのですが、いったん資格の学習はここで終えようと考えています。 今後は、『ゼロから作るDeep Learning』シリーズの本を読んだり、Kaggleをやってみたり、やりたいことの候補がいくつかあるので少しの休息を経て次の目標を立ててやっていきたいと思います。